私の宇宙人コンタクト

変性意識で臨む「コンタクトワーク」体験記

2019-09-15 予告された試み


プレ・コンタクトワーク

 宇宙人コンタクトは、我々と宇宙人双方が作り出す “コンタクトエネルギー” を基盤として起きる。またそれを集団で行うとき、人間側が作り出す “グループエネルギー” の「状態」が、コンタクトにとても大きな影響を与える。

 ふだん単独でワークをしていると、年に一、二度の集団でのコンタクトワークはお祭りみたいな気分になる。そんなとき感じるのが数の力だ。実際、数に応じた結果というのは得られるもので、すると集うごとに期待するようになる。そうして私はいつしか、コンタクトワークは「数こそが力だ」と考えるようになっていた。だから少人数のときは、あまり期待できないと半ば悲観をしてしまう。

 しかしそれは大きな誤りだった。
 私はチームで行うコンタクトワークの本質を、見失いかけていたらしい。

 2019年9月15日。我々はまず夜のワークサイトの下見を行い、そのあと場所を移してプレ・コンタクトワークを行った。これは本ワークのためのエネルギー的下地造りとなるもの。時刻は午後の3時頃。森を切り開いた約15m 四方の空き地で、昼間でも人が来ない静かな場所だ。そこに腰を下ろすのは男性2人に女性2人。今回は4名しかいない。

 目を閉じて頭を垂れ大きく息を吐けば、待ちかねていたようにみるみると意識が変わる。普段ではあり得ない早さだ。静かな呼吸を幾つか挟み、今度は大きく息を吸いながら顔を上げて行く。そして正面に上げ終えたとき、閉じた瞼の裏側にそれは在った。

 白くてのっぺりとした扁平ドーム状の何か。室内天井用の丸ドーム型ライトを、天地を逆にして地面に置いた状態。ぱっと見そんなふうに見える。

「何だこれ? なぜこんなものが……」
 そう思っていると私の中に答えが流れ込んで来た。
 ──その中にこの四人がいる

 白いドームは我々のグループエネルギーらしい。もちろん象徴的なイメージということだろう。ここで急に、分析は止めてハートに委ねたほうがいい、との思いが強くなる。私は思考を手放すことにした。

 変わらずそこにあるドームを、今度はハートで受けとめてみる。
「これは……」
 私は驚嘆した。ドームから、それはつまりこのチームから、伝わる一体感と調和的なバイブレーションがあまりにも見事なのだ。均整の取れたドームの形状は、その現れだったのかもしれない。伝わるバイブレーションを胸の奥深くで美しいと感じている。ハートチャクラが応じるように動き始めた。

 グループエネルギーは大きくて強くなければ期待できないなんて、私はいつから勘違いしてたのだろう。小さくてもこんなに調和的で美しいバイブレーションを作り出している。この調和こそがコンタクトへの鍵だったのに。どうして忘れていたのだろう。
 私は認識を改めると、再びハートのフィーリングに意識を戻した。

「──いる」
 いくらか後のこと、軽い衝撃を受けはっとする。
 これは強いエネルギーが近くに現れた、しるし。

 内的視覚で探すまでもなくそれが映る。と言うよりは認識に飛び込まれた感じだろうか。私の正面、空き地と森の境界からほんの数歩入った辺り。樹々の中に佇む者がいた。
 ローブかロングワンピースのような白い布をゆったりと纏い、それが森の緑に映えている。ミディアムロングの髪はベージュに近い薄茶色だ。なのにどうしてか顔だけが分らない。存在が女性だというのは、姿を見る前から……なぜだろう、不思議と分っていたのに。

 佇む彼女から感じるバイブレーションとその存在感は圧倒的だった。けれども私はすぐに自分へと意識を戻してしまい、彼女を顧みることをしなかった。「それよりも」と、理想的で美しいグループエネルギーに心を奪われていたのだ。呆れたことに「あの存在が来たらここのバイブレーションが高まったぞ」などと喜んでもいた。ちなみにその変化は明確で、このとき心の中で彼女に感謝したのは本当だ。

 しばらくは美しいグループエネルギーと己のハートに集中していた私だが、ふと、かすかな呼びかけを感じた。あれ? 気のせい? 意識の焦点を拡げてみる。

「ともさん」

 森に佇むあの存在が私を何度か呼んでいたのだ。これまで様々な存在とコミュニケーションを取って来たけれど、こんなふうに呼び掛けられたのは初めてで驚く。それにいきなり名前とか。
 彼女はこんなことを伝えて来た。

「今夜わたしたちもあの場所に行きます。そこで試してみたいことがありますので。それをお知らせするために来ました。と言うより、来ちゃいました」

 最後のひと言に笑ってしまう。お茶目な人なのかな?
 そのあとは彼女の呼称に関することを伝えて来た。一つの名前が音として頭に響くが、それを言葉にするのが難しい。数通りを「どれかな」と辿々しく繰り返していると、便宜上の呼称なので「どれでも」と返された。
 “ アイーダ(Aida)” が近そうだけど……。決めるのは後にして彼女とのコミュニケーションを終えた。


 何だろう、色んなものが自分から溢れそうになっている、急にそんな気がした。だからひとまず、ここまでのことを胸にしっかり受け止め直したいと思うのだった。
 この美しいグループエネルギーと、それを作ってくれている仲間たちのこと。わざわざ予告に来てくれた存在。彼女の出現がもたらしたエネルギー的恩恵は計り知れない。何より、まともな対応もしなかったが、これは紛れもないコンタクトだった。それなのに、彼女はプレワークのサポートに徹してくれていた。

「ああ、これってぜんぶ本当なんだよな」
 夢みたいだと、しみじみ思う。
 そして震えそうな胸にしっかりと刻み込みこんだ。

「……ありがとう」
 感謝と愛で、胸が一杯だった。
 嬉しくて嬉しくて感極って涙が溢れて止まらない。

 涙はプレワークが終わるまで本当に止まらなかった。皆の迷惑にならないように音がせぬように、涙や鼻水を何とかしなくてはならず、大変な思いはしたけれど。この時の気持ちを忘れることは決してないだろう。

コンタクトワーク


 日没後、暗くなったところで本ワークなのだがあいにくの雨。ワークサイト脇で車中待機となる。幸い20時を過ぎた頃には回復し、我々はワークサイトへと展開した。


 ワーク#1 ではプレワークで形成したエネルギーと再び同調する。それをフィールドにも定着させ活性化を促す。その上で出来そうならば各自で、宇宙的存在への呼び掛けと招請まで進めることにした。
 ワークをしてみると、エネルギーは充分活性しており基盤造りは申し分ない。特に何か体験した者はいなかったが、まずこの段階を踏むことが目的なのでかまわない。


 小休止を挟みワーク#2 を始める。エネルギー的には各人に体験が起きても不思議ではない状態だったので、言葉の誘導で邪魔をしないよう、無言の瞑想をフルに行うことにした。しかしこの場所に若者の一団が来たことでワーク中断を余儀なくされる。すぐに帰る様子もないので、仕方なく休憩時間とした。いい感じで進んでいただけに残念でならない。


 若者達が去りワーク再開となるが、ワーク#3 に進むことにした。ここまで、誘導なしの自発的な体験を優先して来た。少人数ゆえ誘導役で一人減ることを避ける意味もあったが。しかしまだ誰も体験に至れていない。チームとしてはアンカーとなる体験がそろそろ欲しい。積極的に体験を拾いに行くために、ここで誘導瞑想をすることに。但し誘導は体験ステージの入り口まで。誘導役の私もワークに加わるためだ。

 ところで、人間は宇宙人の高くて強いバイブレーションに曝されると、特徴的な反応を示すことがある。例えば、ぼーっとする、意識が保てず寝る、気分が悪くなる(頭痛等)、お喋りになる、多動(落ち着かない、シュガーハイ的)などだ。これらはワークをする上での留意事項であり、コンタクトが起きているサインでもある。そしてこの日のワーク#3 ではいつにない顕著な反応があったと思われる。


 コンタクトを促す誘導を終える。私はワークとチームのことを常に意識しているからか、たとえ個人のパートに入り努力はしても、ソロワークのような変性意識には至れないのが常だった。けれどグループワークならではの体験はできるので、今回もそれを楽しみに私も目を閉じワークに加わる。もちろんチームにコンタクトを体験して欲しい、それが一番なのは変わらない。

 少しして、ひとりのメンバーの落ち着きが無くなった。うるさく聞こえるほど断続的に体を動かしている。よくありがちな身動きとは明らかに違っており、いささか様子が変だと感じる。何より他者の気が逸れかねないと注意を考えたが、ワークの連続性を優先し、収まるのをもう少し待ってみることにした。それは結局叶ったのだが、思いのほか時間が掛かった。
 そしてようやく静穏が戻り、ワークはしんとした中で進んでゆく。

「ははははっ!」

 すると突然その人から笑い声が上がり、私は心臓が縮みあがりそうになった。奇怪さで場の空気が一変する。かつてない事態の連続に私は困惑するが、無かったことにして流すのが最善と考えた。とにかく皆のワークを途切れさせたくない。だから堪えて、自分のワークへの集中に努めた。
 少し経ち、奇妙な空気も和らいで落ち着きを取り戻した頃。

 バサッ! ダッダッダッダッダッ……

 突然その人が立ち上がり、何処かに行ってしまった。
「えっ! まじ?」
 さっきまでの奇異な振る舞いから、ただごととは思えない。見回してみても既に暗闇の向こうだ。これはまずい、探さなきゃと慌てて立ち上がる。

 みつけた。むこうで気ままに歩いている。様子を伺うも自然な感じなので、とりあえず心配は無いだろう。ほっと一安心して私は椅子に戻った。

 はあ、ほんとにもぅ……自由だよなぁ、なんでもあり、みたいで。
 ……じゃあ、それじゃあ俺も……少しくらいは、いいかのかな。

 この時いい意味でタガが外れ、私は解放された。
「だったら俺も楽しむか!」
 私は役割も何もかも放り投げ、めっちゃワクワクしながら、変性意識に飛び込んだ。

 我々のチームは原っぱでサークルを作ってワークをしている。私は椅子に座る自分の周囲を眺めていた。ただし目は閉じており、変性意識下の不思議な視覚によるものだ。そのサークルの内側や周辺に、複数のゼータ・レチクル星人と思しき姿が見受けられた。少ないがヒューマノイドタイプもいるようだ。

 ふと、すぐ近くに誰かが立っていたことに気付く。あ、いたのかと思い姿を捉えてギョッとした。普通よりも背の高いゼータは初めてで、その違和感がすごい。

 今度は私の左にいるヒューマノイドタイプの存在に気付く。彼はサークルの内側に向いているので、私は横顔を見上げるような感じだ。
 コンタクトに関わる種族としては考え難いのだが、東アジア系の容貌だ。四角顔に黒髪角刈り、体躯も纏う雰囲気も精悍な壮齢の男性だった。その佇まいはまるで映画の1カットのようで、印象的なことこの上ない。

 彼の身を包むのは、光沢のない暖かみのある灰色で厚みを感じる生地。立ち襟で前合わせ、程々にフィットしたその服はデザインもシンプルだ。見るからに制服なのだが、如何にもと言うようなSF臭ささはそこになく、我々でも普通に着れそうな気がする、そんな服だった。私に画力があればなあ。

 改めてこの場を眺める。我々よりも数多くの宇宙人が、ワークに応じて来てくれた。そしてチームの仲間たち。ここにいる全ての存在に対して、私はどうしようもなく愛を感じるのだった。

 するとにわかに胸が熱くなり、ハートのエネルギーが変化を始める。これがそのまま高まりもし臨界を越えたなら「あれ」が起きるかもしれない。そうなればグループワークの場では初めてだし、もう自分のことで手一杯になるはずだ。だから一瞬迷った。けれど、今夜はなんでもありと決めたのだから、それでもいいかと覚する。

 よし、では身を任せてしまおうと、プロセスを解放しかけたその時だ。

「ローランですが来てますので!」

 と、どこからか慌てたように来訪を告げられる。
 かなり──びっくりした。不意打ちでしかもでっかい声で館内放送されて飛び上がる、そんな感じだろうか。
 熱かったハートのエネルギーが一気にクールダウンしてゆく。

 こんな報告をわざわざ言葉でされた事はなく奇妙に感じる。とは言うものの、グループワークという場でメッセージやチャネリングではなく、普通の会話みたいにコミュニケートされること自体、今回が初めて。

「えっ、 ローラン?」
 もうひとつの驚きは “彼女” がコンタクトワークにやって来たことだ。私は慌ててハートから意識を逸らし、どこ? どこにいる? と探ることになった。

 “ローラン” この名前は、私とのコンタクトが成された後に便宜上つけられたものだ。どうやら西欧にはこれと同じか似た名前があるようで、調べてみるといずれも末尾に -n が付き、慣習ではこれら全て男性名となるらしい。しかし彼女の名前は文化的なものとは無縁で、純粋な技術用語に由来する。

 コンタクトが起きるステージは多面的で多岐にわたり、それぞれ特徴がある。私も様々な状態でコンタクトをして来た。ただそのどれであれ、なぜかコンタクト相手の顔をしっかり認識できないことが多い。色々視覚で情報を得られても、不思議と顔だけがぼんやりしていたりするのだ。

 そんな私の前に顔も姿も鮮明なまま、初めて現れてくれたのが彼女だった。それは8年前の 2011年夏、この場所でのことだ。
 残念なことにそれ以降は彼女の姿を見ていない。出会ってからすぐ後に2回ほど、内的なスペースでのコンタクトはあった。内容はむしろこちらの方が濃いのだが、ただ姿は見れないものだった。以降、チャネリングで稀に出て来るのみ。

 だからこうしてコンタクトされるのは、実に8年ぶりとなる。しかもここは初めて会った場所、感慨もひとしおだ。なのにエントリー宣言だけをして、姿を見せない彼女だった。


 ローランがこのフィールドにいるのは間違いない。或る感覚が彼女の存在を捉えている。ただその感覚が得意とする「位置の把握」だけが出来ないでいた。そんな探りを入れていると、彼女の側にいる別の存在に気付く。

 側といっても単純に横にいる訳ではなく「より向こう側」だ。例えどの方向から近付いても必ずローランの向こう側に配置されるような。これはたぶん物理的な位置じゃない。ローランの向こうに「控えている存在」、そう感じられた。こんな捉え方も、そしてその両者の関係も、ちょっと面白いなと思うのだった。

 好奇心でその向こうの存在に意識を絞ろうとしたら、一体いつの間に? 既に私の側に来ていた。椅子の右側に白い服で迫るように立つ、その姿に気付いた時はギョッとした。両手もだらんと下げた如何にもホラーな立ち姿に。

 なんとそれは「アイーダ」だった。プレワークに来てくれたあの宇宙人だ。彼女、森の中にいた遠目の印象よりも実際は背が高かった。そしてやっぱり顔は見えない。肩下まで伸びた髪はちゃんと見えてるのに。
 ともかく約束どおりに来てくれたのだ。また胸の奥がじーんと熱くなる。

 プレワークでアイーダは言っていた。
──「今夜わたしたちもあの場所に行きます。そこで試してみたいことがありますので。それをお知らせするために来ました。と言うより、来ちゃいました」
 予告どおりに今夜来てくれたことにただ感激していた私は、告げられた言葉の肝心な部分を思い出せていなかった。何かを試す計画があるから、それをわざわざ伝えに来ていたのに。
 それにしても。あのときは軽やかに話していた印象のアイーダが、姿を見せてから終始無言だ。なにか雰囲気が違うのだ。ホラーとは別の意味で。

 先程はハートへのチャージが始まりかけ、もうプロセスに身を任せてしまえと手を放すところだった。そこにローランの慌てたような声が掛かり、気を逸らされた私は一旦リセットされたのだ。あのままハートの状態が臨界を超えたとき、起きる可能性があったもの。それをひと言で表すなら「バースト」だろうか。

 もしそこに至れば私という存在は光の極小微粒子となり、ハートからその光が一気に噴き出す。それが環境や宇宙にまで拡散し溶け合って一つとなり、全てが私だという状態になる。そしてその全てはただ愛でしかないと感じる。深くて大きな宇宙との合一体験だ。

 それだけにとてもセンシティブなもので、体験が起きた後の自分へのケアが何かと大変だったりする。ソロワークでならまだしもグループワークの最中である。戸惑った理由はその辺りだった。ハートが臨界を越えてしまうと制御が難しく、踏みとどまるならその手前でなければならない。

 因みにこれは前週末のコンタクトで起きた、射出体験とは別のものだ。

 ローランに声を掛けられ一旦は治まったものが、アイーダが来てくれたことで再び活性化を始めた。今夜はもう「なんでもありだから」と心で一度呟いてから、私はとうとう全てを弛緩させる。この言葉を免罪符にして飛び込んだのだ。

 私が私に許してリリースしたのは「ハートの中で愛を感じきる」こと。するとハートのエネルギーが高まり連鎖反応が始まる。これがどこまでゆくのか、臨界を越えたらバーストするかは予測できない。それでもそれらは見知ったプロセスだ。

 しかしながら今回の私は、やはりタガが外れていた。喩えるなら急な下り坂で自転車のペダルを踏みまくるような、プロセスを呼吸で加速させるという愚挙をしでかす。早い深呼吸を五回ほど。たったこれだけのことだけど、このときの私には熾火に吹子で濃酸素を送るのと同じだった。ハートは急激に活性化し胸の内圧が一気に高まる。いつになく全身がじんじんと痺れて、五つ目の呼吸で意識が途切れて暗転した。

 そんなに時間は経っていないと思う。 
 気付いたら体から離れて頭上に浮んでおり、ゆっくり上へと昇っていた。

 字面だけならほとんど臨死体験か。あの過度な呼吸はちょっと危なかった、という自覚はあって今は反省している。もうしない。

 さて、この上昇をしている時、じつは抜け出たボディが拡大する感覚があった。そしておおよそ3メートルまで昇って停止する。私は前を向いたまま固定され身動き一つ取れない。またフリーズだ。こうゆう時はたいてい宇宙人が何かやっている。

 待機時間はさほどではなく、体に向けての降下が始まった。なんとなく漏斗に落ちて行くような錯覚を抱く。実際、降りるにつれて自分のボディが今度は小さくなる感覚があったので、そのせいなのかもしれない。しかしこれらのイメージは、あながち間違いではなかったようだ。

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 自分の体にちゃんと戻って来た私。なーんだ大丈夫じゃん、と思いきや私が戻されたのは自分の後頭部だった。その頭蓋骨付近の片隅に小さくなって納まっていたのだ。すみませんお邪魔してます、って感じに。
 経緯はともかく、こんなふうにちんまりと納められた時、頭の内側に個室空間ができたように感じる。この状態を自動車車内とする喩え方があるが、それは私も同じだった。

 今回は後部座席。だから私という車が運転されるのを眺めることしか出来ない。つまりこれは何者かの憑依を受け、加えて肉体の主導権を奪われている時の感覚であり、私は「あーあ、取られたか」と思っていた。

 こうした憑依の場合、始まって馴染むまでに少し気分が悪くなることがある。それが少し強めだったようで「うっ……きもちわるい……」と心の中で呻いていた。
 まさにそんな時だ。

「おおー! すごいな! おもしろい! こんなふうなんだな」

 どうやら運転席にいたのは男性で、それは大層な喜び様だった。というか興奮してはしゃいでいるのだろうなこれは。そこで気付く、彼はさっき私の横に立ってた壮齢の男性だと。あの時は渋いおっさんだと思ったんだけどなあ。

「ああ、でも意外と上手く同調できるものだな」

 できてない、できてないよ! 俺けっこう気持ち悪いから。

「ははは!」

 お願いだから、運転もう代わって……。

 気持ち悪さが治まったら、今度は意識がぼーっとして来た。気を張って彼を見張るのも面倒になり意識を手放したくなる。そこからは記憶も時間感覚も曖昧だ。彼が身体から出て行く感覚は覚えていない。
 気が付いたのは自分が自分の中で領域を拡げ、じんわりと感覚や制御が戻るときだった。しかし「夢から覚めたら夢でした」ではないが、変性意識の体験はまだ続いていた。

 まさに寝起きみたいな覚束ない意識で、私は独り呟かずにはいられなかった。

「まったくもう……誰だよ、あれ。誰なんだよ……」

「エルダー」
「そうエルダーです」

 まさか返されるとは思っておらず驚いた。それも即答で。二人の女性の声だった、のはいいけれどなんで同じことを競うように言ったのだろう?
 二人とも私の左側の数歩離れた辺りにいるようだ。視覚のスイッチは憑依の時に落ちたままなので、それ以外の感覚による感知だが。アイーダが右側から逆サイドに移動していた。その隣に居るのはローランか。いつの間にか近付いてきていたようだ。

 ただ私はこのとき混乱していた。じつは当日この段階でアイーダの呼称は確定していなかった。昼間に伝えられた名前が聞き取りにくかった為に、未だにエイーダやエイダという候補もあったのだ。そこによく似た音でエルダーという名称を聞かされて、つい早合点をしてしまった。幾分寝ぼけていたせいでもあるが。

「そうかエイダじゃなくてエルダーだったか、やっとでちゃんと聞き取れた。あれ? じゃあエイダはエルダーなんだから……うわ、おっさんかよ。なんでずっと女の格好してたんだ?」

「違います、彼は彼で彼がエルダーなので私ではありません」

 翻訳機能すごい! そして毎度ながら会話のつもりは全く無いのに、思考は奇麗に読まれてた。会話と思考、この境界線を私は未だに探している。もしかして無いの?

 アイーダへの誤解が解けたあと、私はただぼーっとしていた。彼女たちがすぐ側に居たというのになんて勿体ない! と今なら思うが、この時は疲れていて何もしたくも考えたくもなかったのだ。原因は言わずもがな。

 そうこうしているうちに、ポツリと顔に水滴が当たりハッとする。雨だ。私の意識が急速に覚醒に向かう。宇宙人たちの気配もわからなくなっていた。ワークへの没入もここまでだ。間を置いてまたポツリ。予報ではいつ降り出してもおかしくないのだ。時間的にも頃合いか。私は目をあけて、チームをワーク#3 のクロージングへと導いた。

 皆が目を開ける頃、ポツポツ来てたはずの雨が収まっていた。まだ少し猶予がありそうだったので、異例だがここでひとまずシェアリングとした。

 詳しくは述べないが、いつもは内的体験をする人が変性意識の深いとろに入ってしまい、かえって何も体験出来なかったり、眠るように深く入ってしまう人が非常に落ち着かない状態になるなど、いつもとは違うイレギュラーな傾向が皆にあったようだ。

 うち1人はフィールド内に、ゼータレチクルやヒューマノイド型、他数種の異形の存在を内的視覚で捉えていた。

 落ち着きのなかった人のことは、他の人も気になっていたようだ。本人曰く、とにかくじっとしていられなかったとのこと。笑ったことに関しては理由をよく覚えていないらしい。あと急に立ち去ってあちこちしてたのは、じっと座っていられなかったところに鹿が鳴いたので、そっちに行きたくなった、と言うことだった。鹿が鳴くのは毎度のことだが、この行動は初めてのものだ。


 程なくして再び降り出した雨は、すぐに本降りとなる。流石にもう無理だろうと、この年のグループ・コンタクトワークを終えることにした。後にするコンタクトサイトはエネルギーが非常に良い状態になっており、惜しみながらの撤収だった。

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付 記

プレワークのグループエネルギー

 小さくも美しく調和的で、統合されたグループエネルギーが作られていた。私はこれまで誘導の役割を優先し、ワークに没入しなかったために知覚出来なかっただけで、もしかしたら以前から同じようにあったのかもしれない。しかし、人数が多くなければとか、エネルギーが強くなければ期待出来ないという、間違った固定観念に気付かせてくれた。統合の度合いこそが如何に大切かを学ぶよい機会となった。

プレワークでのコンタクト

 私のコミットメントの度合いが違うのはともかくとして。プレワークという場において、宇宙人をあれほど明確に知覚したこと、テレパシーでコミュニケートしたこと、名前まで告げられたこと、本ワークへの参加を宣言されたこと、この全部が初めてだ。しかも予告は鮮やかに履行された。私個人の体験ではあるが、これらは驚きの出来事だった。

特徴的反応とトリガー

 メンバーの1人に見られた多動性については、コンタクトエネルギーを感じ取ったが故の特徴的反応だったと推測している。私にとってはこの方の行動(散歩)がトリガーとなり、役割の自縛から解放された。グループワークにおいて進行や誘導を度外視し、ここまでの変性意識への没入とそれに伴う体験をしたことはかつてない。ハプニングが私にもたらした恩恵は計り知れなく、この方には心から感謝している。


3人の宇宙人

『今夜試してみたいことがあります』
 これはプレワークでアイーダが私に伝えた言葉だ。その試みとは、コンタクトの最中としては異色の出来事となった「憑依」だと、私は推測している。
 あの憑依は、私が変性意識の深い所に一気に飛び込み、気を失った時に起きた。ただあのダイブは、びっくりするような大きさでローランに声を掛けられ実は一度リセットされている。その直後にアイーダが私の椅子の右側に着き、お預けを食らった私がはやる気持ちでリトライしたものだった。

 つまり憑依に至るプロセスに私が進めたのは、アイーダが位置に着いてからだ。そのあと彼女は私に付きっきりだった。この出来事の流れやタイミングから、彼女が憑依に直接携わる実行者だったと思っている。であれば彼女の雰囲気が、昼間と随分違っていたのも合点がいく。

『ローランですが来てますので!』
 今夜はもうなんでもありと、プロセスに身を任せかけた途端、ボリュームを間違えた館内放送みたいに鳴り響いたのがローランのこの声だった。いい気分で没入しようとしていたので、かなりびっくりしたのは言うまでもない。

 当初この行為は意味不明だった。でかい声だけ掛けて本人は現れず、その後ささっとやって来たのはアイーダだったし。しかしこれも憑依と言う作業の観点で振り返ってみてようやく理解出来た。私はあの時「待った」をかけられたのだろうと。

 これは想像だが、ローランはこの「試み」の統括的立場なのではと思うのだ。ローランの向こう側にアイーダが控えているように感じられたことや、作業終了後に実行者と思しきアイーダに合流してきたことなどからも、そんなふうに思えてしまうのだ。

『意外と上手く同調できるものだな』
 この壮齢の男性を最初見かけた時は、精悍で威厳さえ感じたのだが、憑依のさなかに見せた喜びようでそんな印象は吹き飛んでしまった。ただ彼がどういう立場の存在なのかは、よく分らない。

 彼女たちは揃ってこの男性を「エルダー」と称した。ワーク直後のシェアリングで私は皆にこの体験を話し、エルダーと言う呼称について訊ねた。すると、名前にも使われるが「知恵を持った年長者」という意味もあるよと教えられた。私は英語に疎く全く知らなかったのだ。後日、辞書を引いてみるとこのような意味があった。
Elder:年上、先輩、古参、年長者、年配者、長老、人名

 憑依の直後の独り言は「なんて名前なんだよ?」ではなく「誰なんだよ?」だったのだが。それに応答してきた彼女たちがはたして、人名としてのエルダーを答えたのか、それとも立場上の呼称(役割的)を言ったのかはやはり分らない。どちらでも意味が通じるからだ。あの男性は確かにエルダーの意味に適った、容貌や雰囲気を持っていたのだ。


カルチャーショック

 最近急に増えて来たテレパシーについては、分らないことが多い。以前それが私に投げ掛けられるときは、いつも必要最低限を簡潔丁寧にという感じだった。

 そんなところからも伺えるように、私がこれまで接して来た宇宙人たちはおしなべて抑制的であり、コンタクトには静かに真摯に取組んでいる印象が強い。一部の例外たちも過去にはいたけれど。
 だからコンタクトに携わる宇宙人とは、もっと言えばコンタクトとはそうゆうものなのだと、私は10年近く信じて来た。そしてそんな彼らのコンタクトのスタイルに、私は自然と馴染み帰属していたらしい。

 実はグループワークの1週間前にはソロワーク(記録 2019-09-07)をしており、そこでもコンタクトが起きていたのだが、その時の存在たちの雰囲気が、これ迄とかなり違っていたのだ。珍しくも頭に響いた声は、感情豊かで奔放で思わずこちらも反応しそうになる、そんな人間っぽさが伝わってきた。総じて抑制的で真摯な宇宙人と関わって来たからなのか、「これ本当に宇宙人かな?」と現場で疑ったくらいなのだ。

 そして今回の宇宙人達も、プレワークでは茶目っ気を感じる口ぶりだったし、憑依してきた男性は感情を露に何やら叫んでいた。彼女たちの何気ない短い言葉にもニュアンスが感じられ、それはこれ迄の宇宙人の言葉には載ってこなかった情感なのだ。

 私がここ最近感じている驚きと混乱と違和感は、喩えるなら宇宙人コンタクトにおけるカルチャーショックなのかもしれない。

女性の二人組

 不思議なことに、私は体験記録を記述する時までの長らくの間、全く気が付かなかった。グループワークでコンタクトした女性宇宙人の2人。この彼女たちと、前の週のソロワークに現れた「二人組の女性宇宙人」が同じかもしれないということに。

 これまでいなかった人間的な言動や感情をみせる宇宙人で、それを知らしめるテレパシー、両者の関係性、私で何かを試行しようとすること、どれを取ってもこれは同じ存在のペアにしか思えない。タイミング的にもキャラクター的にも、ほぼ間違いないだろうと思っている。そして……いささか、複雑な気持ちでもある。

(2021-03-19 改稿)
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