私の宇宙人コンタクト

変性意識で臨む「コンタクトワーク」体験記

2021-06-20 ミニマムな来訪接触


 この出来事はここに書くべきかどうか少し迷うくらい、ごく短いものだった。

 6月20日の日曜夜。日付が変わる30分ほど前の自室内でのこと。読んでいた小説の退屈な展開が嫌になり、私は手にしていた電子書籍端末を放り投げると、畳んであった布団に背を預けた。休憩にはこのもたれ具合が丁度いい。

 目を瞑れば否が応でも浮かんでくる、物語のあれこれに思いを巡らせる。耳には読書のBGMに流していた、心地いい環境音楽が聴こえていた。思考に霞は無く、眠気でぼんやりするような状態ではなかったと記憶している。

 少ししてあれこれ考えることにも落ち着いた頃、ふと背後に何かの気配を感じた。いつの間にか意識のモードが変わっていたらしく、目を閉じながらも周囲を認識出来る別の視覚が働いている。私は少し振り返るようにしてその気配の主を見た。

 私の左手後方、部屋の端にその存在は立っていた。小柄な宇宙人。ぱっと見はゼータレチクル種いわゆるグレイに見えたが、目鼻の造りがそれに近いだけで輪郭がかなり違う。逆さにした洋梨型ではなく、大きく角の取れた丸みのある逆三角形型をしている。一応は見覚えのある顔型。おそらく個人差は無いだろうから、言えるのはそこまでだが。

(おっ、来たんだ……)

 宇宙人のほうから訪ねて来たという事実が胸にしみる。直接的なコンタクトがもう随分と無かったからだ。その辺りは後述するとして、ともかく私は嬉しい気持ちで宇宙人来訪の事実を噛み締めたのだった。

 さて、来訪を視認した私はすぐにその視線を宇宙人から外し、自分の正面に戻していた。「ふふーん」と冷静を気取りながらも、その時の私の顔は嬉しそうにニマニマしていたはずだ。

 正面に向き直った視界には、伸ばされた自分の足とその向こうの室内が映る。近付いて来るであろう宇宙人を敢えて見ず、そんな体勢で待つ事にした。それは背中での意思表示。コンタクトへの許可であり促しだった。
 しかしそれ以上に、平静を装いたいという小さなプライドもあったようだ。クールを偽装しわくわくしながら待ち構える。こんなふうに。

(今回はどんなことをするのかな。まあでも──好きにすればいい)

 そこで客観的で分析的な意識が気付く。未だにBGMがはっきりと聞き取れており、思考の明確さも先程とそんなに変わっていないことに。これは少しばかりおかしなことだ。

『物質世界』をベースに展開するコンタクトが私に起きるときは、意識の変性の度合いはもう少し深く、その影響で幾らかぼんやりしているのが常なのだ。だから思考がクリアということはない。これはむしろ『意識の内的世界』でコンタクトする、私の区別によるところの「明晰モード」の状態に近いことになる。どうゆうことだろう。

 そうこうするうちに宇宙人が私の左横までやって来た。しかしこの存在からエネルギーの強さをさほど感じない。そういえば部屋に現れた瞬間もそうだった。物質世界でのコンタクトでは、宇宙人からは高いバイブレーションやエネルギーを感じることが多い。事は今、部屋の中で実際に起きているようにしか思えないのだが……本当は意識世界の内的体験なのだろうか?

 と、その時──私は触れられた。そっと手が置かれたのだ。

 私の両足太腿に宇宙人が手を乗せている。その手には施術的な動作もエネルギーも無い。肉体としての手がただリアルに、私に静かに添えらていた。私は視線を正面に見据えるばかりだったので、視界の下端でなんとなくそれを捉えている程度だったが、しかし何よりも私の皮膚感覚が、ありありとその手を感じていたのだ。微かな温もり、重み、部分的な肉付きの柔らかさまで。
『ああ、この宇宙人は確かにここにいる』
 私はそれを受け入れた。サーシャが言う通り、触れられる事による説得力とはこの上もないものだ。


 少しすると宇宙人の存在感が徐々に希薄になり始める。触れられた手の感触も弱まり、最後はフェードアウトするようにすうーっと消え去ってしまい、このコンタクトは終わった。

 宇宙人の手が私の足に宛てがわれた瞬間は「ほっ」と息が漏れそうになり、そしてコンタクトを終えれば、満ち足りた不思議な安堵感が残っていた。そう感じてしまった訳を説明したい。

 じつは昨年の春、自身の状況に小さくない変化があり、折り悪くコロナ禍の煽りを受けたことで苦境と不安に陥っていた。そんな心理状態だったせいなのか昨年は何度フィールドに出掛けてワークしても、明確なコンタクトは起きなった。
 そして今夜。停滞していた私の状況が明後日からようやく動き始めるというタイミングでの、思いがけない来訪だ。その手から優しさを感じてしまい、癒され励まされた気になるのも仕方が無い。

 蛇足だが、なぜ触れたのが太腿だったのだろう。3年前、胸を執拗に撫で回されて困ったことがあったが、こうゆう時こそ胸(ハート)へのタッチじゃないかと少し思う。相手が違う気がするので、言っても仕方がないのだけれど。

 さて、私が「ほっ」とした本当の理由について触れたい。

 物質世界でのコンタクトでは、宇宙人のほうから私の部屋を訪ねて来るのはとても珍しい事だ。例外として1990年代中頃、ある事情で数多くの来訪と接触を受けた。また何とも判別できないような得体の知れない存在もたまに来る。しかしそれを除けば本当に数少ない。

 前回の来訪は2016年の春先のこと。炬燵でうとうとしたら、高いバイブレーションとエネルギーを纏った背の高い存在が現れた。驚き圧倒され歓喜する私に
「今年は頼む」
ぼそりとそうひと言つぶやいて、その存在はさっさと立ち去ってしまった。
『えっ、なにを?』と問い返す間もない。いささか呆気にとられながら、私はその言葉の意味を考えた。

 私の野外ソロ・コンタクトワークは暖かい時期に集中して行う。つまりワークにはシーズンがある。そして2010年以降コンスタントに発生していたコンタクトが、2014年から2年間(2シーズン)ピタリと止んでしまっていた。そして2016年、今年もまたどうせ駄目なのだろうと諦めが入りかけていた頃、異例にも向こうから訪ねて来た。これ自体が既にコンタクトなのだが、それに加えて「今年は頼む」と言ってきた。
 だからそうとしか思えなかった。コンタクトの依頼であり予告だと。
 でも……本当に?

 本当だった。
 その年のシーズンが始まるとコンタクトが再開され、以降2019年まで続いたのだ。

 そんな訳で私は期待している。ブランクを経たこの2021年のコンタクト再開を。
 言葉こそ無かったが、願わくば前例どうりでありますようにと。

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