私の宇宙人コンタクト

変性意識で臨む「コンタクトワーク」体験記

2021-07-17 よく解らない飛翔


 小道の上、背後は森で眼前は原野。そんな場所で20時からワークを始める。

 まずは呼吸に焦点を合わせゆっくりと意識を変性させてゆく。ところが少しして、座っている椅子が鳴っていることに気が付いた。これは呼吸によるわずかな動きで、背もたれの支柱が軋む音。最初はそう思っていた。ところが音と呼吸が少しずつずれ始め、あれっと思った私は息と身動きを一度止めてみる。

「カチカチカチカチ──カチカチカチカチ」

 鳴り止まない、つまりは椅子も呼吸も関係ないと。けれどもこのリズム
『吸って(カチカチカチカチ)──吐いて(カチカチカチカチ)』
私の呼吸にかなり近い。

 ともあれ夜の森や草原で初めて耳にする異音。さらに背後の真っ暗な森からも木霊のように聞こえ始めれば、にわかに場の空気が変わり肌が泡立つ。しかし同時に不可思議な状況を楽しむ自分もいた。謎のまま、この雰囲気のままでワークするも面白そうだと。

 しばらくはそれでも良かった。けれどだんだんとうるさく感じ始め、とうとう私は椅子から立ち上がり音を辿ことになる。それは小道の脇に転がる伐採された太い幹からだった。帰宅後に調べたところ、幹の奥に潜むカミキリムシの幼虫が木を噛み砕いて食べる音だとか。ものすごい音を出すものだ。

 それにしても困った。この耳障りな音、木を叩いても蹴っても一向に鳴り止まない。かと言って今からワーク場所を変えるのも難儀なので、仕方なく諦めることにする。考えてみれば環境と一体化するアプローチは、コンタクトワークにとっては意味のあるもの。ならばそれを試みるいい機会なのかもしれない。
 かくして私は得体の知れない奇妙な音をメトロノームに、意識を変性させることになった。

 どれくらい時間が経っただろう。文字通り異音のリズムと息がピッタリな自分にふと気付く。変性した意識は拡がり環境と一つになり始めている。いい感じだ、もう少しだ。そう思った時だった。
 吸って、吐いて、吸って──次は当然息を吐く。ところがどうしたことか、私はさらに息を『吸って』いた。

(えっ!)

 意図していない、自分のあり得ない呼吸と、そうさせたものに驚く。ちょうど息を吸い終わったタイミングで、何かに背中をぐいと押されたのだ。それで胸を反らせたのが原因らしい。

 次の瞬間、私は椅子の前に直立不動で浮かんでいた。

 足が地に着いていない。身体の自由も無い。ああ……この感じ。バイブレーションもエネルギーも、これはコンタクトの時のもの。じきに彼らが近付いて来るだろうと意識の端で思う。しかし程なくして私は椅子に戻されてしまう。ただし「すぐにまた」という予感があり、自然と呼吸に注意が向けらる。すると本当にその直後、

吸って、吐いて、吸って──吸って!
(ほら来た!)
 私はぐいっと押し出され、再び椅子の前に直立姿勢で浮かぶ。いったい何がしたいんだ? と訝しみつつ待てどもやはり彼らは姿を見せない。そうしてまたもや私は椅子に戻される。この繰り返しにいったいどんな意味があるのか、すごく知りたい。

 ちなみに押し出され身動きも出来ず浮かべられるという流れは、2019年9月のコンタクト(記録『EJECTION』)での射出体験によく似ている。ただあの強烈な衝撃と苦痛は今回は無く、そこは幸いだった。

 さて、椅子に戻されて少しして。今度はなんと「着座姿勢」のまま、私は椅子から夜空に飛び出して行く。もちろんされるがままの出来事だ。

 この滑稽な姿勢での奇妙な飛翔は、2シーズンぶりにコンタクト再開となった2016年にも何度かあった。後述するサーシャによれば、これは肉体ではなくライトボディでの体験だったらしい。ものすごい速度と急激な動きによりリアルなG(重力加速度)を感じていたとしてもだ。
 今回の飛翔でもそれをしっかりと感じていたが、やはりライトボディでの体験なのだろうか。あまり見られたくない格好なので、そうであったと願いたい。


 ところでそのサーシャ、つまりリサ・ロイヤル氏がチャネルするプレアデスの存在である彼女は、かつて私にこう言った。「あなたのコンタクト体験が深まれば深まるほど、常識では理解出来ない奇妙なことが今後さらに増えるでしょう」と。
 そうなのだ。コンタクト体験が始まった頃の出来事は、まさにザ-コンタクトと呼べるような、理性でもまだ受け入れられるものだった。しかし次第に理解に苦しみ混乱するようなものが増えてきたのだ。
 サーシャのこの言葉は、コンタクト状態だというのに宇宙人ではなく巨大な蛇が2度に渡り現れたことに当惑した私が、後日彼女に質問した時のものだ。
 以降、確かに色々と不可思議な事に見舞われてきたが、中でもひときわ奇妙な感覚に陥るのは、場所や時間が重複する体験のときだろう。


 コンタクトサイト周辺や夜空を飛び回ることは、久し振りだが以前何度か経験しているもの。しかし今回それに加えておかしなことが起きる──いや、すでに可笑しいのだけれど。

 夜空に昇り幾らか飛び回っていたと思ったら、ふといつの間にか地表付近を飛んでいた。暗くとも見覚えのある通りや裏路地を、滑るように駆け抜けている。そこはワーク地から遠く離れた私の生まれ故郷であり、何故か町並は住んでいた子供時代のものだったのだ。
 単なる記憶の再生ではと言われるかもしれない。しかし退行催眠を手掛けていた者の見地からすると、記憶の再体験とは明らかに別のものだ。それに移動している身体感覚は、ワーク地を飛翔するのと同じくかなりリアルなものだった。違いといえば感じるエネルギーが、どこか張り詰めたように少しピリピリしていたことだろうか。


 実は子供時代の町並を飛ぶのは、覚えている限りではこれが2回目となる。
 七、八年前に室内でコンタクト状態に投げ込まれた時のこと。場所と時間を超え、覚えていない子供時代のコンタクト(アブダクション)を、現在進行系で体験(理解に苦しむが客観的には再体験)したことがある。このとき2つの場所と時間の出来事を、主観的ではあるが私は重ねて体験していた。
 そのアブダクションの過程の中で、透明な球体に閉じ込められて真夜中の町を飛んだのだ。今回のピリピリとした感覚は、過去の体験で覚えた大きな絶望感と無力感の名残なのかもしれない。
 余談だが、そのアブダクションでは大きな高揚感も覚えており、そんな幼少の自分の矛盾した心理に、何とも言えない複雑な気持ちになったことが忘れられない。

 
 そんな懐かしい町並を一巡りすると、通りのひとつから急角度で上昇する。すると切り替るようにそこは既に今この時のワークサイトの上で、今度は地表に向けて一気に駆け下る。軽い衝撃にはっとすれば、私はもう椅子に帰り着いていた。
 言いようのない不思議な余韻を残しつつ、この奇妙な体験はここで終わる。

 目を開ければ映る、流れ去ることなくどしりとした原野の暗がりにほっとする。そして静寂。ワークの邪魔者から友に転じたあの音は、いつの間にか消えていた。

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